インタビュー : 先人からの贈り物を次世代に〜生みの親に聞く【4】

道具を使いこなすには、発明者が何を思ってそれを作ったのか、その思想を理解することが近道。そこで、usp Tukubaiの生い立ちを、生みの親である當仲氏に語ってもらった。

Tukubaiの由来は「這いつくばう」こと

なぜコマンドセットをTukubaiと名付けたのですか?

Tukubaiは茶道に出てくる道具ですが、茶道の精神って色んな物を足していくという発想ではなくて引き算なんだそうです。例えば人間って丸裸では生きていけないので、何か身につけるわけですけど、最低限必要なものは何かという話になった時に、余計な物を削いでいったら何が残るでしょうか、というのが茶道の精神の根底にあるんですね。UNIX文化にも通じる物があるように思います。

また、茶道はお茶の追求だけじゃない。茶室があって、右から入るだの左手を添えるだの、座り方がどうの、書や華を愛でるだの、非常にうるさいんです。あれはなんだろうと思っていましたが、突き詰めると相手に失礼のないように、かつ自分の言いたい事も通すために、無駄な動きや会話をしないための立ち居振る舞いを追求する道なんです。

USPのロゴや今回のコマンドセットの名として頂いた「つくばい」の語源。これは「這いつくばう」で、人に頭を下げるとか、相手に畏敬の念を持って礼を尽くすという意味です。茶道でつくばいは水を汲んで手を洗うための器です。それは凄く低い位置に作られていて、それを使うためには膝を曲げてかがまないといけない。そういう姿勢をすること自体が礼儀を表現することに繋がるんです。

こういった、余計な物を削ぐとか礼を尽くすといった精神は、ある意味企業情報システムを作る精神に似通っているな、と。会社っていうのは無駄な動きをしちゃいけませんよね。勿論、何もしなくても駄目。的確なことをテキパキやらないといけないでしょ。ちゃんと技術を進歩させつつ、内部崩壊もさせず、マネージメントもこなし、社員のやる気を維持しなきゃいけません。それをやるために無茶苦茶お金をかける、なんて乱暴なことをやっていると、駄目になっちゃうんですね。システムを作る側の人間はそういう企業の立ち居振る舞いを理解していないと良いシステムは作れませんよ。

インタビュイー

當仲寛哲(とうなか・のぶあき) : 1966年生まれ、兵庫県出身。株式会社ダイエー在籍時に、UNIXシステムを再勉強し感銘を受ける。そこで学んだUNIX的発想を活かし、当時年間数百億円費やしていた社内システム維持費を数十億円に削減させ、社長賞を受賞。2004年独立し、ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所を創立。現在に至る。

USP MAGAZINE Vol.4「特集1 ついに始動Open usp Tukubaiプロジェクト第二章 先人から>の贈り物を次世代に」より加筆修正後転載。

usp Tukubaiユニバーサル・シェル・プログラミング研究所の登録商標。

Last modified: 2014-01-13 00:00:00